フェライト系ステンレス鋼は、クロムを主要な合金元素として含むステンレス鋼の一種で、その組成によって磁性を持ちます。クロムの含有率は通常12%から30%の範囲で、ニッケルをほとんど含まず、オーステナイト形成元素が少ないため、室温でフェライト相(体心立方構造)を保持します。この特性により、フェライト系ステンレス鋼は耐熱性と耐酸化性に優れ、比較的安価であるため、幅広い用途に利用されています。
主な特徴
磁性: フェライト系ステンレス鋼は磁性を持ちます。
耐酸化性と耐熱性: 高いクロム含有率により、優れた耐酸化性と耐熱性を持ちます。
加工性: オーステナイト系に比べると硬度が低く、加工しやすいですが、冷間加工時には硬化しやすい特性があります。
耐食性: クロム含有率が高いため良好な耐食性を持ちますが、オーステナイト系ステンレス鋼に比べると若干劣ります。
用途
フェライト系ステンレス鋼は、その特性を活かして様々な分野で使用されています。
キッチン用品: 調理器具やシンクなど、耐食性が求められる用途。
建築材料: 建物の外装材や内装材、手すりなど。
自動車部品: 排気系統の部品など、耐熱性が求められる用途。
電気機器: 電磁調理器の底板など、磁性を必要とする部品。
注意点
フェライト系ステンレス鋼は、冷間加工による硬化(加工硬化)が起こりやすいため、加工時には注意が必要です。また、一部の腐食環境下では、耐食性が低下することがあるため、用途に応じた適切なステンレス鋼の選択が重要です。
フェライト系ステンレス鋼は、コストパフォーマンスに優れ、特定の条件下で非常に有用な材料です。その多様な特性により、工業製品から日用品まで、私たちの生活の様々な場面で活躍しています。
宮春
You
